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SAPの大規模DITA導入事例の進展(2016年11月)

前回(ドイツTC World Conference 2016でのDITA)に続き、ドイツのDITA報告です。

ドイツに本社をもつSAPは全世界をカバーする大規模なDITA導入を進めています。
11月8日Tekomでは、Dr. Sven Leukert氏(独SAP)とPriscilla Buckley氏(仏SAP)による「From Custom XML to DITA」と題する講演があり、また11月13日のDITA OT Dayでは、「Large Scale Production Using Project Maps」という題でyoussef Bennani (仏SAP)の報告がありました。さらに、11月14日~15日に開催されたDITA Europe 2016でも二つのセッションで発表がありました。

SAPのDITAについては、2年前にDITAコンソーシアムジャパンのFestaでDr. Sven Leukertに講演していただきました。SAPはそれまで独自のCMSと独自XMLを使っていましたが、2011年に全社的にDITAを導入することを決め、IXIASOFTのCMSを選択しました。SAPは多くの企業や製品のM&Aを進めており、社内でドキュメント制作の方法がバラバラになってしまったことから、DITAを採用してドキュメント制作を効率化する狙いがありました。

移行のためにChange Management(移行管理)専門の担当者を配置し、また影響を受ける各領域のワークグループとChange Agent(移行担当者)が中央のプロジェクトと連携して移行を進めるという組織的かつ大がかりな移行を計画しました。

2012年第1四半期にキックオフし、2012年第4四半期に、HANAのユーザーガイドをDITAで制作したガイドが初リリースとなりました。その後もDITAの展開をすすめ、2016年には、オーサー700人以上で300製品、47言語、DITAファイルは320万以上に達するとのことです。これを、20種類以上の形式で、毎夜6万以上、自動的に出版しています(レビュー用の出版のようです)。出版の形式には、HTML5やWebHELPなどのオンライン用形式やPDFを含んでおり、PDF生成には、Antenna House Formatterが使われています。SAPのプロジェクトは、恐らく現時点で世界最大のDITAプロジェクトと思われます。

SAPのDITAの成果物生成でキーになっているのはProject Mapです。Project MapはDITAのmapを特殊化したもので、製品毎に成果物の出力条件を設定しています。成果物の形式(HTML、CHM、PDF、Eclipshelpなど)はプロジェクトにより、少ないものから、多いものがあります。小さなProjectでは、Project Mapは10件に満たないようですが、大きなProjectでは数百になることがあるようです。Project MapはCMSに統合されているEclispe開発環境で管理しています。

ERP、CRM、SCMなどの製品には共通の基本部(Basis)が使われています。Project Mapには製品と基本部で分けて作成階層化されており、依存関係を規定します。成果物の生成時にはProject Mapに規定される依存関係でリンクをチェックして、正しくないリンクは削除して、エラーをログに出力します。執筆担当者は、ログをみてリンクの設定を修正できます。