カテゴリー別アーカイブ: コラム

コロナ状況下における弊社米国オフィスの現状(その2)

昨日の「コロナ状況下における弊社米国オフィスの現状(その1)」の続きです。

米国スタッフは毎年ヨーロッパや米国で開催される、多くのカンファレンスや展示会に参加しています。しかしCOVID-19により、4月から6月に予定されていた9つのカンファレンスはキャンセルや、延期となってしまいました。また今年の下半期に予定されていたいくつかのイベントも、すでにキャンセルされたり2021年に延期となっています。現在では多くのイベント主催者が従来通りのイベントではなく、オンラインイベントの開催に取り組んでいます。2020年や、またその先のイベントに参加するかどうかは、安全に移動することができるかにかかっています。

社内においては11の会話やテキストメッセージのやり取りにはSkypeを利用し、グループでの会議や顧客との打ち合わせにはWebexを利用しています。6月上旬にはお客様向けのウェビナーも開催する予定です。

毎日届く多くのEメールを見てみると、COVID-19が世界中に広がってしまった事により、ほとんどの顧客やパートナーも在宅勤務で仕事を続けているようです。

近い将来には、在宅勤務が私たちの働き方になるでしょう。米国ではどうやってCOVID-19の感染拡大を抑えるか、どうなればロックダウンを解除して、通常の生活や旅行ができるように戻れるかなど、いまだに混乱が続いている状況です。


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コロナ状況下における弊社米国オフィスの現状(その1)

日本国内でも非常に大きな影響を与え続けている新型コロナウィルスですが、弊社の米国オフィスから現地のレポートが届きましたので、ぜひご一読ください。

弊社は米国のデラウェア州にオフィスがあり、日本以外の国に向けて営業やマーケティング、サポートを行っています。日本のオフィスや全世界にいる顧客とのやり取りは、主にEメールで行っています。

去る316日に米国内におけるCOVID-19の感染状況の悪化により、私たちはデラウェア州にあるオフィスの閉鎖を決定し、全社員が在宅勤務に移行しました。すでにEメールが主なコミュニケーション手段であった事と、使っている全てのツールがオンラインで使えるものであったため、在宅勤務への移行は比較的スムーズでした。私たちは現在、問題なく在宅で業務を行っており、顧客に対して以前と変わらないサービスを提供しています。

弊社の最も優先すべきことは、今までもそしてこれからも社員とその家族の健康と幸せであり、そしてお客様に最高のサポートと対応をお届けすることです。

COVID-19の大きな影響の一つは、日本との年次会議のための弊社の社長と従業員の渡米をキャンセルしなければならなかったことです。1年ほど前に米国オフィスは引っ越しをしたのですが、今回の会議は社長にとって新しいオフィスを訪問する初めての機会になるはずでした。今回は実際に会いながらの会議は出来ませんでしたが、3日間のWebexを使ったウェブ会議で全ての会議の予定を完了することができました。


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2020年5月よりテレワークを本格導入へ。中小企業のテレワーク実践例としてご参考まで。

アンテナハウスでは2020年5月7日よりテレワークを本格導入します。テレワーク本格導入にあたり、中小企業のテレワークの一例として、これまでの経過と状況を共有します。皆様の参考にしていただければ幸いです。

弊社はしばらく前からテレワークの仕組みについて検討してきました。そうした状況の中で、2020年3月下旬に小池東京都知事より、COVID-19の感染防止のため外出自粛要請[1]があったことを契機に、希望する社員を対象にテレワークを開始しました。さらに2020年4月7日の政府の緊急事態宣言[2]に対応し、東京オフィスでは全社員を対象にテレワークを導入、当番出社方式で出社人数80%削減を目標として運用してきました。

さらに4月10日より愛知県と岐阜県でも独自の緊急事態宣言[3][4]があったので、名古屋支店でも全社員対象のテレワークを導入しました。伊那支店は緊急時のテレワーク対象にはなっていません。長野県伊那保健所の管内でもCOVID-19感染者がでています。これはすべて東京・関東への出張者、東京からの帰省者が持ち帰ったものとその2次感染であり、濃厚接触者の追跡ができているようです[5]。伊那支店の社員が感染するリスクはほとんどないと判断しました。

さて、テレワークのシステムの作り方はいろいろ考えられます。弊社のテレワークでは主PCは会社の事務所にあります。テレワークを行う社員は主に自宅のPCから会社のPCにVPN(仮想専用線)でアクセスし、会社のPCにWindows10リモートデスクトップで接続(リモートログイン)して、会社のPCを遠隔操作して業務を行う形式です。この方式ですと主PCやデータを社外に持ち運ぶ必要がないので、データの紛失や二重化・分散化を防ぐことができます。また、会社のPC上でのみ機密データを扱えますので機密漏洩の防止という点でもやり易くなります。但し、欠点としてはリモートデスクトップ接続のPC画面上に、会社のPCの画面を表示すると画面表示に若干の遅延が生じたり・マウスが誤動作するという報告があります。

弊社では事務所が東京2か所、名古屋、長野県伊那にあり、従来より事務所間をVPNで接続しています。今回のテレワークのための投資は社員の自宅からもVPN接続ができるようにするため各事務所のルータを強化したことのみです。ですのでそれほど大きなコストはかかっていません。

3月から行ってきたのは導入経過からして緊急時のテレワークです。一方、これとは別に、長期的に働き方を変えていくことも必要という認識のもとに、2020年5月から就業規則にテレワーク規定を追加しました。これにより、緊急時だけではなく、希望する社員は平常時でもテレワークができるようになりました。

このように、現在のところ、平常時は希望する社員のみのテレワーク、緊急時は会社の指示により全社員対象のテレワークという二つの形態を用意しています。そして、政府・自治体などの緊急時宣言や天変地異などの状況に応じて非常時と平常時の切り替えを行うことにしました。このようにテレワークを2種類用意したのは、現在の時点ではテレワークの方が良いとは言い切れないためです。

それはいくつかの理由があります。第1の理由は、社員が必ずしもテレワークを希望していないということです。例えば4月末にテレワーク希望者を募った結果は、東京と名古屋で働く社員の4割弱でした。COVID-19感染のリスクがある状態で4割弱しかいないので、もし、COVID-19感染リスクのない状態ではテレワーク希望者はもっと少ないでしょう。そうしますと、今後働き方の選択肢の一つとしてテレワークを用意するのが現実的と思われます。

第2の理由は会社にとっては、テレワークはコストアップになっているということです。テレワーク規定によりテレワーク手当を支払うのですが、これは大きなコストアップ要因です。また、現在の運用方式では会社のPCの電源は24時間365日ONにするため電気代が余分にかかります。一方、テレワークで削減できるコストは今のところ通勤交通費のみです。このため差し引きするとコスト増となります。この先、半年程度のスパンで見る限り、テレワークによるコスト削減は期待できそうもありません。これは将来的に一人あたりのオフィスコストを減らすことができるかどうかにかかります。オフィスコストを減らせればトータルでコスト削減につながるでしょう。

第3の理由として管理上の課題があります。例えば、労働基準法ではテレワークであっても就業時間などを管理しなければなりません。また社員間の連絡でもどこで働いているかが直ちに分かる必要があります。このため、各自のテレワークの開始・終了は自社製品の行先番で表示して管理しています。行先番を使うと簡単なチャットもできます。画面は次のようになります。

その他に、スケジュールやデータ共有のためのグループウェアをいくつか組み合わせて使用しています。以前より事務所間のテレビ会議はSkypeで行っていました。テレワーク中の社員は自宅からSkype会議に参加します。このようにテレワークのために新しく導入したソフトウェアは今のところありません。今後は生産性をあげるためのコミュニケーションのシステムを検討する必要があります。

第4の理由として、現在のように事務所に主PCを置いて自宅からリモートデスクトップ接続で使うという方式は災害などで事務所が使えなくなったときは運用できなくなる、という問題があります。地震などの自然災害に備えるテレワーク形態はさらに検討する必要があります。

このようにテレワーク運用はまだ課題が多いので、今後さらに見直しを進めていかなければなりません。

[1] 感染者急増で外出自粛要請、小池都知事「重大局面」
[2] 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見
[3] 愛知県 県独自の「緊急事態宣言」外出・移動の自粛求める  
[4] 【速報】岐阜県が独自に非常事態宣言
[5] 長野県内における新型コロナウイルス感染症の動向

次へ:テレワークの目的を考える やはり日本では首都直下地震対策が一番重要


PDFへの押印は『瞬簡PDF 書けまっせ』におまかせ!

「瞬簡PDF 書けまっせ」ならPDFへの押印が楽々

働き方の大変革が世界中で起きているようです。特にペーパーレス化は最優先で解決すべき大きな課題です。日本では印鑑(印影)を紙の書類に写す「押印」という作業がネックになっていることは周知の通りですが、この「印」を押すこと自体を無くす、あるいは電子的な別の手段で代替することでペーパーレスを実現しようと懸命な努力が続けられています。

ところで、アンテナハウスのパソコンソフト「瞬簡PDF 書けまっせ」は、2007年発売の「書けまっせ!!PDF3」から印影作成機能を持たせるなど、PDFへの押印を便利にする機能を持っています。スキャンした印影の画像をPDFに貼るだけなら「瞬簡PDF 編集」などでも可能ですが、「瞬簡PDF 書けまっせ」の印影作成は格上の機能を持っています。

例えば、お持ちの印鑑の印影画像を使ってすぐに押印することができます。スキャナーを使って印影を取り込む機能もあります。通常の画像貼り付けではなく、印影が透過していることがポイントです。印影のサイズや位置を数値で指定することもできます。

特殊な印影の作成や印影管理も可能

いろいろな種類の印影をパッと押すには、印影の管理機能が必要になります。また、日付印などは特殊な印影を挿入する専用のツールでないと実現できません。「瞬簡PDF 書けまっせ」はこうした高度な印影作成機能・管理機能も持っており、多くの「押印」需要を満たせるのではないかと考えます。

日付印機能の応用として、「瞬簡PDF 書けまっせ」が持っている機能をフルに活用した事例が当ブログの記事になっていますので、改めてご紹介します。

押印とPDFについてさらに詳しくご紹介した資料をPDF資料室で公開しています。下記のページをご覧ください。



アンテナハウスの公開資料

ここ暫く外出が減り、外に出ていた時間を読書や学習にあてるという方も少なくないのではないでしょうか。
出版社による期間限定の書籍の無料公開も様々にあります。
以前から公開されている企業の技術資料をこの機会に読んでみるのも、新たな発見があるかもしれません。

何気なくWebページで技術資料を検索していたら弊社の記事だった、
なんてことを先週の休日にも体験しました。日本語情報自体が少なめなものでしたから、見つけて吃驚しました。日々技術や規格はアップデートされるものですから、資料の更新日時などには注意が必要ですが、そこさえ押さえてあれば色々と興味深い資料が見つかります。

アンテナハウスでは書籍や漫画のような形態の資料も公開しています。
トップページや製品ページからもアクセスできますが、折角なのでここでも一部紹介します。

マンガでわかる!! アンテナハウス システム製品利用例シリーズ
https://www.antenna.co.jp/system/PDFCase000.html
仕事の合間にもさらっと読める、漫画形式の製品利用例の紹介です。同じようなお悩みが見つかるかもしれません。
XSL-FO の基礎 第2版 – XML を組版するためのレイアウト仕様
https://www.antenna.co.jp/AHF/ahf_publication/index.html#fo-basis
「XML組版に興味はあるけど、JISやW3Cのページをいきなり読むのは辛いなぁ」という方におすすめです。
CSSページ組版入門 第4版
https://www.antenna.co.jp/AHF/ahf_publication/index.html#CSSPrint
こちらはCSS組版での書籍作成の入門書になります。AH CSS Formatter用の拡張を使う箇所もありますが、CSS組版での基本を把握できるようになっています。
MathML 数式組版入門
https://www.antenna.co.jp/AHF/ahf_publication/index.html#MathML
数式マークアップ用の言語MathMLの入門書です。こちらも、「興味はあるけれど、いきなりリファレンスを読むのは辛い」という方におすすめです。

その他にも http://www.cas-ub.com/project/index.html で公開している書籍などがあります。「印刷された形で欲しい」という方にもPrint On Demand 本として購入いただけますので、ぜひどうぞ。


頼れるもの

みなさん、こんにちは。
今日はよいお天気になりました。
私も在宅ワークに移行し、このブログをせっせと書いております。

日本は古来よりさまざなな神様や信仰、宗教が入り混じった社会で、大きないさかいもなく今に至っているというのは、
他の国から見ると、おそらく奇異でしょうね。
いいとこ取りして、これに困ったらあちらに頼む!ということは私もしてます(^^)
豊作や豊漁、安全を祈願するお祓い、穢れや厄をおとすためのお祓い、
金運や安産のためのお守りがあったり、加持祈祷をしてもらったり。
妖怪にも祈願します。
今、話題にのぼっている「アマビエ」。
アマビエは半人半魚の妖怪で、長い髪やくちばし、うろこを持つとされています。
江戸時代末期の弘化3(1846)年に肥後国(熊本県)の海に現れ、
「疫病が流行したら、私の姿を描いた絵を人々に見せよ」と告げて海へ帰ったという言い伝えがあり、
疫病退散に御利益があると信じられてきました。
このような妖怪を「予言獣」と呼ぶそうです。
妖怪の姿になっても、私たち人間のことを思ってくれるんですね、ありがたい<(_ _)>

地元の和菓子屋さんではこのアマビエをかたどった生菓子を考案。
もともと和菓子は季節を表現したり、節句に家族の繁栄を願ったりと作られた背景には物語がある、ものなんだそうです。

みなさん、体調管理に気を付けましょう。
それでは、また。

(参考:中日新聞地方版)


新型コロナウィルスCOVID-19と戦うための情報システムの必要性について【2020/03/26 記事ライセンス追記】

3月23日に小池東京都知事が東京ロックダウン(都市封鎖)の可能性に言及する[1]など、新型コロナウィルスの脅威はいよいよ切迫した情勢となってきた。その背景には、「海外の様々な地域でロックダウンが始まっているため在留邦人が帰国してくるが、その人たちの中に感染者が含まれており、これまでなんとか避けてきた感染者の爆発的増加のリスクが高まっている」という状況分析がある[2]。

こうした状況を鑑みて、次に新型コロナウィルスCOVID-19と戦うための方策と問題を整理し、新しい情報システムについて提言する。

COVID-19の感染パラメータR0

ある感染症に対して、誰も免疫をもたない集団に初めて感染症を持ち込んだ一人の感染者が感染力を失うまでに何人に感染させるかを指数としたものがR0である[3]。COVID-19のR0はWHOのサイトでは予備的に1.4-2.5とされている[4]。R0が1より小さければ自然に収束するが、1より大きければ、何も対策しないと感染者数は集団免疫ができるまで増えていくことになる。

問題は増えていくスピードである。北大の西浦教授のグループの論文によると、ある感染者の発症から、その感染者から感染した2次感染者が発症するまでの期間の中央値は約4日~5日とされており、この日数はCOVID-19の潜伏期間とほぼ同じか少し短いようだ[5]。このことはCOVID-19は感染して潜伏期間中・未発症のときにも感染することを意味する。このため、感染して発症した人だけを隔離しても感染を防止できない。

諸外国のCOVID-19感染防止策

一般的にはR0を操作して感染拡大を防ぐことになる。以下、[3]より引用である。

R0 = β×k×D
βは、一回の接触あたりの感染確率、
kは、ある時間あたりに1人の人間が集団内で平均何回の接触をするかの係数、
Dは、感染症ごとに推定されている感染期間(kと同じ時間単位で測定)を表します。
βの感染確率は、感染症および接触の種類によって異なりますが、マスク着用、手洗いといった公衆衛生学的対策により、βを低下させることができます。
kについては、人々が接触する回数が減れば、減らすことが可能です。

中国では1月23日に武漢を封鎖(ロックダウン)し、武漢以外でも外出禁止などの措置をとったようだが、これは強制的に接触回数(k)をゼロに抑え込むことに相当する。現在、欧米各国でも同じようにロックダウンを選択する地域が増えている。都市封鎖では都市の出入りのみでなく、同時に外出などの活動も厳しく制限することになる。kをゼロにもっていけばCOVID-19の感染数は増えなくなるのは明らかである。しかし、劇薬であり、経済活動がほぼ完全に停止する。長期間に及べば破産する企業や個人が続出するだろう。ロックダウンは長期的に継続できないので必ず解除される。COVID-19が全世界に広まってしまった以上、解除後に他の地域からCOVID-19が再移入されることになる。従って、ロックダウンは最後の解決策にはならないであろう。

日本でのCOVID-19感染状況経過

日本は1月15日に初の感染者が確定した[6]。この方は武漢からの帰国者である。その後、しばらくの間、COVID-19については政府のチャーター便による帰国者とダイアモンドプリンセスの乗客・乗員の感染者の話題が中心で、国内の市中では観光業界に感染者が現れたぐらいであった。

中国政府が武漢を封鎖したのは1月23日であり、海外への団体旅行は27日から停止された。武漢で新型コロナウィルスが広がり始めたのは2019年の12月以降である。武漢国際空港の2019年の月間平均値で東京と大阪へ向かう人数を合計すると7,905人となっている([7] 表2)。こうして、日本では1月から2月の上旬まで、中国から来日した人が日本で発症するケースが主体であった。しかし、2月中旬に東京の屋形船での集団感染(クラスター)が発生した頃からは国内での人から人への感染が増えてきた。

政府・自治体の対応

政府は1月30日から新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、随時会議を行っていたが、2月14日には「専門家会議」の設置を決定しており、その後、25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が決定された[8]。 また、厚労省にはクラスター対策班が設置されている。

2月のCOVID-19の感染報告数は都道府県別にかなり差異があり、2月末には都道府県別でみると北海道が最も多かった[9]。北海道の鈴木知事は2月28日夕方に「緊急事態宣言」を出し2月28日から3月19日までの3週間、週末の外出を控えるように要請するに至った[10]。

3月下旬の状況

3月23日まで、日本のCOVID-19市中感染者数は無症状110名、発症者980名、陽性症状確認中5名である(武漢からのチャーター便による帰国者、空港検疫を除く)[11]。これまでは感染者数の増加スピードは欧米と比べて非常に緩やかである。これは日本では欧米に比べてR0がかなり小さいことを意味している。R0が小さいのは、欧米諸国と比較して日本ではマスクを着用する人の割合が多い、手洗いやアルコール除菌が普及している、キスや握手などで人同士の接触の習慣がない、などで感染確率(β)が小さいことが一つの理由と考えられる。また、政府や自治体の要請に従順に従って外出やイベントを控えた人が増えたことで、接触回数(k)が低下したことも理由に挙げられるだろう。

しかし、3月24日には1日に65人(患者58名、無症状病原体保有者3名、陽性確定例(症状有無確認中)4名)という、過去最大数の感染者が報告されている[12]。

クラスター対応という戦略

日本では専門家会議が、より踏み込んで「密閉空間であり換気が悪い」「手の届く距離に大勢の人がいる」「近距離での会話や発声がある」という3つの条件が重なった場で、集団感染(クラスター)が発生するので、これを避けることを勧告している。この根拠は、クラスター対策班の成果として「多くの事例では新型コロナウイルス感染者は、周囲の人にほとんど感染させていないものの、一人の感染者から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例が存在」が判明したことによる。つまり、COVID-19は、一定の条件がそろうと大勢に感染しクラスターができるが、そうでないと全く感染しないことが多い、という特異な感染パターンを持つようである[13]。これは上記のβが環境依存になっていることを示すのではないかと思われるが、このような事実を発見できたことは幸運である。

この結果をみると、まれにクラスターが発生するときに一人で多数の感染者を生み出すので、そのようなクラスターの連鎖が起きないように、連鎖を断ち切ることを徹底することでR0を小さくできる。

二つの問題点

このようなクラスター対応の戦略を実行するにあたっては、次にあげる大きな障害がある。

第一は入手できる情報の遅延である。例えば、3月24日の感染者報告に記載されている地方自治体からの報告の内容をみると、発熱などが発症してからでも1週間以上経過している人が多い。潜伏期間を考えると、この人たちが感染したのは2週間ほど前になるのではないだろうか。ある感染者がら次の感染者に感染するまでの日数が4~5日ということは2週間の情報の遅れで3次感染まで進む可能性がある。このため、もし、ここでクラスターの連鎖が起きてしまうと、知らない間に感染者が急増してしまう。

第二は感染者を特定できないうちに感染が広がってしまうことである。22日から厚労省の統計で空港検疫の数値が出始めたが、24日時点でPCR件数1417に対して陽性18(1.3%)。無症状が13、症状あり5なので、感染していて症状がない人の方がずっと多い[11]。また、しばらく前に武漢からチャーター便で帰国した人は全数検査しているが、最初の数便(2/7まで)ではPCR件数566人に対して陽性9名(陽性率1.6%)。無症状保菌者3名、発症者6名であった[14]。

PCR検査に精度の問題があるとしても、流行っている地域から来た人の中には、100人あたり1人~2人くらいの感染者がいて、そのうちかなり高い比率が感染しているけれど無症状の人、ということになる。感染して無症状でも他の人を感染させる可能性がある。しかし、無症状感染者はもし感染リンクが追えないとすると判別がつかない。

対策案

第一の問題に対する対策としては感染者情報を収集して公開する速度を速くすることが必要である。このためには、新しい情報システムを構築する必要があるだろう。データの可視化については、現在、オープンソースの可視化システムができており、例えば、北海道庁の対策の成果はだれでもビジュアルに確認できるようになっている[15]。これによって、鈴木知事の緊急事態宣言が成果を上げたことが可視化されるのは素晴らしい。

しかし、ここに表示されるデータは2週間ほど前に起きた事象を反映する、古い情報であることを忘れてはならない。しかも、どうやらこのデータ収集は手作業で行われているようだ。既に疫学関係者のブログや疫学会の要望にもあがっているので、ここでは繰り返さないが、ここはシステム化して手作業の負荷を減らすとともに、情報伝達のタイムラグを小さくして、対策措置の有効性を確認できるまでの期間を短くしないと、COVID-19の感染速度についていけない。

第二の問題に対する解決策としては、流行っている地域や場所にいた人の情報、流行っている地域から来た人の情報をスマホアプリを使って収集管理し、後日に、もし感染が発生した場合に、その人たちや濃厚接触した人々に通知する仕組みを構築すると良いだろう。いち早く参加者に感染の警告を通知することで、外出したり人と会うのを自粛してもらえるようにしたい。こうした情報システムを構築するのは比較的容易と考えられるので早期に取り組むべきである。

(3/30追記)ニュースを見ていると、そろそろ、病院で患者を収容しきれない状態になっているということで、医師会の記者会見で緊急事態を宣言するべきではないかと提案したという[16]。症状や位置を追跡用するためのスマホアプリを用意したうえで軽症者は退院・自宅待機とするなどの対策を提案したい。(ここまで)

(5/2追記)5月中旬より新しい情報システムが導入されることになったようです。⇒「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について

最後に

武漢からチャーター便で帰国した人の全数検査でみるように、武漢でCOVID-19が流行っている頃の集団でも100人に1~2にしか感染者がいなかったということは、逆に見れば100人中98人から99人は感染していないということになる。集団の中に含まれる極小数の感染者による感染を避けるために都市全体をロックダウンする、というような激しい手段を取るのはあまりにも非生産的である。コンピュータの能力を生かした情報システムをうまく使ってもっとスマートな対応を目指していきたい。

資料

[1] 知事「都市封鎖回避への協力を」 NHK News Web 2020年3月23日
[2] 厚生労働省クラスター対策班による都における現状分析・推計 厚生労働省クラスター対策班 2020年3月21日
[3] 感染症疫学の用語解説 日本疫学会
[4] Statement on the meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the outbreak of novel coronavirus (2019-nCoV) WHO 2020年1月23日
[5] Serial interval of novel coronavirus (COVID-19) infections 2020年3月4日
[6] 新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(1例目)厚生労働省 2020年1月16日
[7] Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study 2020年1月31日
[8] 新型コロナウイルス感染症対策の基本方針 新型コロナウイルス感染症対策本部決定 2020年2月25日
[9] 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月28日版) 厚生労働省 (注記)(別添1)国内事例(チャーター便帰国者を除く)の表を集計。
[10] 北海道知事 道民に「緊急事態宣言」NHK News Web
[11] 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年3月24日版) 厚生労働省 (注記)24日12時までと明記されているが、実際には3月23日に自治体から報告された件数までの集計である。厚労省は前日に地方自治体から報告された件数を翌日の日付で公表している。
[12] 新型コロナウイルスに関連した患者等の発生について(3月24日公表分) 厚生労働省 地方自治体の報告を整理したもの
[13] Closed environments facilitate secondary transmission of coronavirus disease 2019 (COVID-19) 2020年3月3日
(注記)問14 集団感染を防ぐためにはどうすればよいでしょうか?(厚生労働省)に同じデータが掲載されている。
[14] 新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月7日版)厚生労働省 2.国内の発生状況についての表より
[15] 道内の最新感染動向北海道庁サイト
[16] 「緊急事態宣言を出してほしい」日本医師会が会見、医療崩壊に危機感

 


2020/03/26 追記:

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この作品は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

著作権利者の表記は次のいずれかをご使用ください。

  • アンテナハウス株式会社
  • AntennaHouse,Inc.

※上記の宣言によってCC-BY-4.0 の対象としているのは本記事に関してのみとなります。また、引用箇所についての権利は各著作権利者に帰属します。

以上追記。


桜の風景

先日出先で桃色の花が目に入って
桜?いやいやいやいやまだ季節が早い?梅?桃?なんていいながら近寄ってみたところ「河津桜」と表記がありました。
一足早く1月から2月にかけて咲く桜とのこと。

先週はやはり出先で虹を見ました。
足元まではっきりしている虹をみるなんて何年ぶりだろう。

ちょっと明るい気分にもなれたし
ブログのネタにもなっていただこうって思ったのですが
これだけで引き延ばすのはむつかしいですね。


プログラミング小噺三題

スタティックメソッドはどうですか

ちょっと、仕事プログラムで1つのファイルが肥大化傾向があって、「Java クラス 分割」というキーワードでググってみた。
そもそもJavaってのはクラスを分割して書けないという融通の利かない言語で、割と常識的なこととか初心者向けのことを書いてるページが並ぶ。

『何をクラス分割の指針とすべきか』(https://iwamototakashi.hatenadiary.jp/entry/20090530/p1)に書いてあるLCOM (Lack of Cohesion in Methods) ってのが面白い。
元ネタはITmedia。

で、常々失敗したOOPプログラムに接していると、いかに変数を減らすか、いかにインスタンスを減らすかばかり考えているわけですよ、最近は。
で、先程のページの

『ちなみにインスタンス変数のないクラスは、ほぼ不要であると個人的には思っています。そのようなクラスは、
スタティックメソッドの集まりになるのでしょうが:

Static methods are procedural! In OO language stick to OO. And as far as Math.abs(-5) goes, I think Java got it wrong.
I really want to write -5.abs(). Ruby got that one right. Static Methods are Death to Testability

という Miško Hevery 氏の意見(http://misko.hevery.com/2008/12/15/static-methods-are-death-to-testability/)に私は賛成です。』

なんてことを読んじゃうと、喧嘩売ってんのかと思う。いやまぁ、勝手に読んでるのは私ですが。10年も前の記事なんで、今でも同じ考えとは限らないなと思う。

例に上がってるMath.abs(-5)の書き方は重要ですよ。これ、どっからでも呼べますから。
色々考えて最近はDBのテーブルアクセスは全部スタティックメソッドにしてる。SampleTbl.Record rec = SampleTbl.getById(String id)って感じ。
OOP的な意味では全てファクトリですよ。ファクトリしかないのだから全部スタティックメソッド。
レコードは普通にクラスなんで好きにすればいいけど、本質的にはget/setしかない。
で、SampleTbl.getByIdはコード上どこからでも好きに呼べるのが重要。誰がDBアクセスインスタンスを持ってるかとか気にしない。
そういうのは基本戦略としてメソッド内に封じ込める。

まぁ、スタティックメソッドの集まりに価値のある応用もあるってこと。

あと、Math.abs(-5)を先に作って、-5.abs()は最終的にMath.abs(-5)を呼ぶというような実装もよくやる。逆ではない。

私も関数型言語に触れるまではスタティックメソッドを活用しようとはあまり思わなかった。この10年でだいぶコードの書き方が変わった。

モンティ・ホール問題

三つの選択肢のどれかが当り。出題者はどれが当りか知っている。
回答者が選択した一つ以外の残り二つから出題者がはずれを選んで開ける。
さて、回答者は選択を維持するか変えるかどっちが有利か。これがモンティ・ホール問題。

モンティ・ホール問題が納得いかなくて、なるべく愚直にプログラムを書いてみようかと思い、
具体的にどう書こうかと考えてる間に納得してしまった。でもPythonで一応愚直に書いてみた。
「モンティ・ホール問題 プログラム」でググると似たような愚直なプログラムを書いた人は結構いるので掲載はしない。

Ubuntu 18.04のカスタマイズ

最近Ubuntuを使いにくいなぁと思っていた。問題はGUIで上にバッテリーステータスや日付表示されるパネルのフォントサイズを変更できなかったからだ。
UbuntuがUnityをやめてGNOME 3に移行したことで、どうやって設定変更したら良いのかわからなくなったのだ。VAIO Pro 11は割と画面解像度が高いので、
そのままでは非常に小さい文字しか表示されない。FirefoxやTerminalは個別にフォントサイズを大きくできるのでいいのだが、パネルに表示される日付やらバッテリー残量やらアプリのメニューやらは小さいまま。Unityの頃はディスプレイ画面のdpiを指定することで全体の文字サイズを調整できたのだがそういった機能はなくなったようだ。Kotlinのお試しのためVAIOを活用しようかなと思い、ちょっとググる。

GNOME 3のExtensionでUser Themesを有効にする。~/.themesに独自テーマのディレクトリを用意し、~/.themes/<テーマ名>/gnome-shell/gnome-shell.cssを作る。

# gnome-shell.css
stage {
    font-size: 18pt;
}

Tweaksの[外観 – テーマ – GNOME Shell]で上記<テーマ名>を選ぶ。
これでようやくGNOME 3のパネルの文字が読めるようになる。ともかく老眼には厳しい話だ。

GNOME 3のウィンドウマネージャはMutterというそうだ。dconf-editorでorg.gnome.mutterに幾つか設定がある。
edge-tilingをオフにすると、Ubuntu 18.04でかなりイライラさせられる「ウィンドウを移動させたいだけなのに、
上に持っていくと最大サイズにされてしまう」という問題が解消する。あぁ、嬉しい。

Ubuntuを起動したまま放置すると例えば30分でブランクスクリーンになるように設定している。
マウスを動かしたりするとブランクスクリーンを解除するのだが、Unityの頃にはなかった変な画面になっている。
真ん中にドカンと時計が表示されるロック画面とは違う謎画面。この画面の解除にはキーボード入力を要求する。いや、正確ではないな。
マウスで解除する方法はあるにはあるが、タッチスクリーンにおけるスワイプアップ相当の動きをマウスで行う必要がある。
これ決めた人は明らかに変。どう考えてもおかしい。キーボードくらい押せばいいとか思うでしょ。マシンを落とす(パワーオフにする)にはメニューから電源オフをするのが正しい手順で、
キーボードがなくてもちゃんと行える。逆に、キーボードに電源ボタンがない限り、キーボードだけでマシンを落とす方法はUIには用意されていない。
ノートパソコンはキーボードの近くに電源ボタンがあるからマシだが、デスクトップ機の電源を落とすのに電源ボタンを押すなんてことは普通しない。
という状況にも拘わらずキーボードを要求する、GNOMEは。とにかくストレス。

GNOME Shell Extensionsに「Disable Screen Shield」というツールがあると知る。
その邪魔な画面はScreen Shieldというらしい。これを無効にしてくれる。あぁ、嬉しい。そもそもScreen Shield自体がオプトインにすべき機能だろうに、
更にはオプトアウトすら用意していない。「GNOME Screen Shield」でググると世界中で迷惑がられてます。


IT化が進むロンドン、変わったものと変わらないもの

海外展示会情報第2回目は、展示会の内容から少し離れてロンドンの情報をお伝えしようと思います。筆者自体、約10年ぶりのロンドンでしたが、色々な変化した点を感じられました。

まずヒースロー空港で驚いたのはかなり自動化が進んでいることです。日本の空港を出発する際もパスポートのスキャンなど一部は自動化されていましたが、スタンプを押すところは職員の方がやっていました。しかしヒースロー空港に着くと、入国審査はすべて自動化ゲートで、税関も申告するものが無ければ素通りです。(ただし自動化ゲートを利用できるのは日本や韓国、オーストラリアなど一部の国のパスポートのみです)

また預け荷物が出てくるのも早く、入国審査が5分ほどで終わったにも関わらず、受け取り場所に行ったら、すでに荷物が流れていました。このスピードはおそらく羽田や成田空港よりも早いのではと思います。

パスポートにスタンプが押されないのはちょっと寂しい気もしますが、スピーディーで英会話の必要もありません。

レストランも自動化が進んでおり、キャッシュレスなのは当然ながら、注文をスマートフォンアプリで行うお店もありました。アプリ上で「店舗を選択」、「テーブル番号を入力」、「料理を注文」、「カードで決済」すれば後は料理が来るのを待つだけ、ほとんどウェイターと接することはありません。英語を話すのは料理が運ばれて来た時の「Thank you」くらいです。

ITテクノロジーによって、どんどん海外へ行くハードルは下がってきているようです。

ただ、レンガの壁と赤い屋根の家並みや、2階建てバス、まあまあの味のイギリス料理など、変わっていない点もたくさんありました(笑)


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